はじめに ― 事務職は安定した人気職種
事務職は、転職市場で常に人気が高い職種のひとつです。ワークライフバランスが取りやすく、残業が比較的少ないことから、特に女性やキャリアチェンジを希望する方から安定した支持を集めています。
一方で「事務職の年収は低い」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。確かに全体平均で見ると他の職種と比較して控えめですが、専門性の高い事務職(経理・人事・法務等)は年収400万〜500万円以上が十分に狙えます。
この記事では、事務職の平均年収を職種別・経験年数別に徹底解説し、事務職で年収アップを実現するための具体的な戦略をご紹介します。
事務職の平均年収の全体像
事務職全体の年収データを確認しましょう。厚生労働省の賃金構造基本統計調査および各社求人データを総合すると、以下の数字になります。
日本の全職種平均年収が約460万円であることを踏まえると、事務職の平均年収は約120万円低い水準です。これは事務職の多くがルーティンワーク中心であり、成果報酬型の給与体系が採用されにくいことが主な要因です。
しかし、経験10年以上のベテランは平均約400万円に到達しており、後述する専門事務職ではさらに高い年収が期待できます。事務職は「低年収」と一括りにするのではなく、どの事務職を選ぶかによって年収は大きく変わるという視点が重要です。
事務職の年収は「専門性」で決まる
一般事務と専門事務(経理・人事・法務など)では、年収に100万〜150万円の差がつくことも珍しくありません。事務職でのキャリアアップを考えるなら、いかに専門性を身につけるかがカギになります。
職種別の事務年収ランキング
事務職の中でも、担当する業務内容によって年収は大きく異なります。以下は主要な事務職種ごとの年収データです。
| 職種 | 平均年収 | 年収レンジ | 求められるスキル |
|---|---|---|---|
| 法務 | 約450万円 | 350〜700万円 | 法律知識・契約書レビュー |
| 人事・労務 | 約410万円 | 320〜650万円 | 労務管理・採用・制度設計 |
| 経理・財務 | 約400万円 | 300〜650万円 | 簿記・決算・税務知識 |
| 貿易事務 | 約380万円 | 300〜550万円 | 英語力・貿易実務知識 |
| 総務 | 約370万円 | 280〜550万円 | 社内調整・施設管理 |
| 営業事務 | 約330万円 | 270〜450万円 | 受発注処理・Excel |
| 一般事務 | 約310万円 | 250〜400万円 | 基本的なPC操作 |
| 医療事務 | 約300万円 | 230〜400万円 | レセプト・医療知識 |
出典
厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」、各社求人データより STRIDE 編集部推計(2025年調査)
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職種別のポイント解説
法務は事務職の中で最も高い年収水準を誇ります。契約書のレビューやコンプライアンス対応など高度な法律知識が必要なため、専門性の高さが年収に反映されています。特に上場企業の法務部門では年収600万円以上のポジションも多く、弁護士資格を持つ法務担当者は年収700万円超も珍しくありません。
人事・労務は、採用・教育・制度設計・労務管理と業務範囲が広く、経営に近いポジションとして評価される傾向があります。特に人事制度の設計経験や、採用戦略の立案経験がある方は、転職市場で高く評価されます。
経理・財務は、日次の仕訳処理から月次決算、年次決算、税務申告まで、スキルレベルに応じて段階的に年収がアップします。簿記2級は最低ラインで、1級や税理士科目合格を持つ方は年収500万円以上が期待できます。
貿易事務は、英語力と貿易実務の知識が求められる専門職です。通関士資格を持つ方や、英語でのコレポン(取引先とのやり取り)ができる方は市場価値が高くなります。
一般事務・医療事務は、求められるスキルの汎用性が高い(=代替可能性が高い)ため、年収水準はやや控えめです。ただし、後述する資格取得やスキルアップにより、専門事務職へキャリアアップすることで年収の底上げが可能です。
一般事務から専門事務へのキャリアアップが鍵
一般事務の平均年収310万円と法務の450万円では、年間140万円もの差があります。一般事務からスタートした場合でも、経理や人事のスキルを身につけることで、3〜5年で年収を100万円以上アップさせることは十分に可能です。
経験年数別の事務年収
事務職の年収は経験年数とともに緩やかに上昇します。ただし、他の職種と比較して年収カーブはなだらかな傾向があります。
| 経験年数 | 一般事務 | 経理・人事等(専門事務) | ポジション目安 |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | 約250万円 | 約280万円 | アシスタント |
| 1〜3年 | 約280万円 | 約330万円 | 担当者 |
| 3〜5年 | 約310万円 | 約380万円 | 中堅担当者 |
| 5〜10年 | 約340万円 | 約430万円 | 主任・チームリーダー |
| 10〜15年 | 約370万円 | 約480万円 | 係長・課長補佐 |
| 15年以上 | 約400万円 | 約530万円 | 課長・部長 |
このデータから読み取れるのは、一般事務と専門事務で経験年数による年収の伸び方が大きく異なるということです。一般事務は15年経っても年収400万円程度にとどまりますが、経理や人事などの専門事務では同じ15年で530万円に到達し、その差は130万円にも広がります。
これは、専門事務職の方がスキルの積み上げが年収に反映されやすいことを意味しています。一般事務のまま経験年数を重ねるよりも、早い段階で専門分野にシフトすることが年収アップの近道です。
事務職の年収が上がりにくい理由と対策
事務職の年収が他の職種と比較して控えめな理由を理解することで、対策が見えてきます。
理由1:「コストセンター」として位置づけられやすい
営業やエンジニアのように直接的に売上を生む部門(プロフィットセンター)と異なり、事務職は「コストセンター(経費部門)」として位置づけられることが多く、報酬の上限が抑えられる傾向があります。
対策:業務改善によるコスト削減効果を数値化してアピールしましょう。「Excel VBAで月20時間の作業を自動化」「経費精算システム導入で年間○○万円のコスト削減」など、事務職でもビジネスインパクトを定量的に示すことが重要です。
理由2:供給過多(競争率が高い)
事務職は人気が高く、1つの求人に対して応募者が殺到しやすい職種です。需要と供給のバランスで賃金が決まるため、供給が多ければ年収は上がりにくくなります。
対策:他の応募者と差別化できるスキルや資格を身につけましょう。一般事務の求人は競争率が高い一方、経理・人事・法務などの専門事務は慢性的に人材不足で、スキルがあれば好条件で転職できます。
理由3:成果が見えにくい
事務職の仕事は「ミスなく正確に処理すること」が求められるため、営業のように明確な成果指標(KPI)が設定されにくい傾向があります。
対策:自ら業務改善のKPIを設定し、上司に共有しましょう。処理速度の改善率、ミスの削減率、業務フロー改善の件数など、自分の貢献を見える化することで昇給交渉の材料になります。
「受け身」から「攻め」の事務職へ
年収が上がりにくい事務職の特徴は「言われたことだけをやる受け身の姿勢」です。自ら課題を見つけて改善提案をする「攻めの事務職」になることで、社内評価と市場価値の両方を高められます。DX推進やRPA導入など、事務職から業務改善を推進できる人材は今後ますます重宝されます。
年収アップに有効な資格・スキル
事務職で年収アップを狙うなら、専門性を証明する資格やスキルの取得が効果的です。投資対効果の高い資格・スキルを厳選してご紹介します。
簿記(日商簿記検定)
- おすすめ級:2級以上(3級は最低ライン)
- 年収への効果:簿記2級で+30〜50万円、1級で+50〜80万円
- 取得期間:2級で約3〜6ヶ月、1級で約6〜12ヶ月
- 経理職への転職に必須の資格。一般事務から経理へのキャリアチェンジの第一歩
TOEIC
- 目標スコア:600点以上(外資系なら800点以上)
- 年収への効果:TOEIC 700点以上で+30〜70万円
- 活用シーン:貿易事務、外資系企業の事務、海外拠点対応
- 英語力がある事務職は転職市場で圧倒的に有利
MOS(Microsoft Office Specialist)
- おすすめ科目:Excel(Expert)、PowerPoint
- 年収への効果:直接的な年収アップは限定的だが、業務効率化の基盤に
- 取得期間:約1〜2ヶ月
- Excel VBAまで扱えると、事務職の中でも希少な存在に
社会保険労務士(社労士)
- 難易度:高(合格率約6〜7%)
- 年収への効果:+100〜200万円(人事・労務のスペシャリスト)
- 取得期間:約1〜2年
- 人事・労務のスペシャリストとして年収500万円以上が現実的に
FP(ファイナンシャルプランナー)
- おすすめ級:2級以上
- 年収への効果:+20〜50万円(金融・保険業界の事務職に有利)
- 取得期間:2級で約3〜6ヶ月
- 金融リテラシーの証明として幅広い業界で活用可能
| 資格・スキル | 年収アップ効果 | 難易度 | 取得期間目安 |
|---|---|---|---|
| 社会保険労務士 | +100〜200万円 | 高 | 1〜2年 |
| 日商簿記1級 | +50〜80万円 | やや高 | 6〜12ヶ月 |
| TOEIC 700点以上 | +30〜70万円 | 中 | 3〜12ヶ月 |
| 日商簿記2級 | +30〜50万円 | やや低 | 3〜6ヶ月 |
| FP2級 | +20〜50万円 | やや低 | 3〜6ヶ月 |
| MOS Expert | +10〜30万円 | 低 | 1〜2ヶ月 |
コスパ最強は「簿記2級 + Excel VBA」
限られた時間で最大の効果を得たいなら、「簿記2級」と「Excel VBA」の組み合わせが最もコストパフォーマンスが高いです。簿記2級で経理の基礎を固め、Excel VBAで業務自動化ができるようになれば、一般事務から経理職へのキャリアチェンジがスムーズになり、年収50万〜80万円アップが見込めます。
まとめ
事務職の平均年収は約340万円と全職種平均を下回りますが、職種選びと専門性の獲得によって年収400万〜500万円以上を目指すことは十分に可能です。
特に重要なのは以下の3点です。
- 一般事務から専門事務へのキャリアアップ:経理・人事・法務など、専門性の高い事務職を目指す
- 資格取得による市場価値の向上:簿記2級、TOEIC、社労士など、投資対効果の高い資格を取得する
- 「攻めの事務職」への意識改革:業務改善や効率化を主体的に推進し、自分の貢献を数値で見える化する
まずは自分の現在の市場価値を正確に把握し、目標とする年収に向けた計画的なスキルアップを始めましょう。
この記事のデータについて
本記事のデータは、厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」および各社求人データをもとにSTRIDE編集部が推計したものです。個人の年収は企業規模、地域、スキルレベル等により大きく異なる場合があります。