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SES業界の現状と将来性【2026年】AIの影響を公的統計と上場20社の有報で検証

最終更新: 2026年10月7日 / 出典は官公庁の統計・企業の有価証券報告書・調査機関の公表資料に限っています(末尾に一覧)。

「生成AIでSESの仕事はなくなる」という声をよく聞きます。実際の数字はどうなっているのか。業界全体の売上、上場しているSES・技術者派遣会社の決算、求人と倒産の統計を、一次資料だけで確認しました。

結論
  • 業界全体はまだ伸びている。情報サービス業の売上高は2026年7月に前年同月比+8.2%、52か月連続の増加。ただし2026年1〜7月の伸びは平均7.4%で、2025年同期(10.0%)より鈍化している。
  • 上場SES・技術者派遣20社のうち18社が増収。減収の2社はどちらも事業の売却・撤退が理由で、本業は増収だった。
  • AIの影響が出ているのは「小規模事業者」と「経験の浅い層」。情報サービス業の倒産は過去10年で最多、ハローワークのIT職は求職者が増えて求人倍率が下がった。大手は未経験者より経験者・AI人材の採用に軸足を移している。

1. 業界全体の売上:52か月連続で増加、ただし伸びは鈍化

SESを含む「情報サービス業」の売上は、総務省統計局のサービス産業動態統計で毎月公表されています。2026年に入っても前年を上回り続けていますが、伸び率は2025年より一段低くなりました。

情報サービス業の売上高 前年同月比。出典: 総務省統計局「サービス産業動態統計調査」(情報サービス産業協会(JISA)の月次整理)。2026年7月は速報値。
月2025年2026年
1月+12.1%+10.4%
2月+9.4%+7.1%
3月+6.8%+7.0%
4月+10.5%+6.8%
5月+11.7%+4.3%
6月+10.1%+7.7%
7月+9.4%+8.2%
1〜7月平均+10.0%+7.4%

同じ統計で、情報サービス業の事業従事者数は2026年7月時点で約148万人(前年同月比+3.4%)。売上も人も、業界全体としてはまだ増えています。「AIでSES業界が縮小し始めた」という段階には、統計上はまだ入っていません。

2. 上場SES・技術者派遣20社の業績:18社が増収

各社の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」から、直近期と5期分の売上・利益を取り出しました。SESや技術者派遣を主力とする上場企業を、事業の中身で3つに分けています。

単位: 億円。売上はIFRS採用会社は売上収益。利益は日本基準は経常利益、IFRSは営業利益(記載が無い会社は税引前利益)。「単」は単体決算の数値。4期前比は5期分の最初の期との比較。出典: 各社 有価証券報告書(EDINET、2026年10月7日取得)。
会社(決算期)売上前期比4期前比利益 前期比
技術者派遣(機械・電気・ITの設計開発)
メイテックグループホールディングス(2026年3月期) 1,376.9 +3.5% +28.5% +6.3%
テクノプロ・ホールディングス(2025年6月期)2025年12月に上場廃止。上場時最後の有報 2,389.7 +9.0% +48.1% +8.8%
オープンアップグループ(2026年6月期)英国事業の売却による減収。英国を除く継続事業は+4.3% 1,674.8 -10.9% +12.7% +4.2%
アルプス技研(2025年12月期) 526.5 +5.6% +34.1% +4.3%
アルトナー(2026年1月期・単) 119.5 +7.4% +47.5% +7.1%
エスユーエス(2025年9月期) 150.2 +13.6% +59.4% +46.5%
アビスト(2025年9月期・単) 106.3 +6.3% +20.0% +7.7%
ジャパニアス(2025年11月期・単) 120.8 +7.8% +66.9% +5.9%
IT系(受託開発・SES・SI)
システナ(2026年3月期) 944.0 +12.9% +44.6% +36.2%
TDCソフト(2026年3月期) 483.6 +8.9% +56.4% +9.8%
デジタル・インフォメーション・テクノロジー(2026年6月期) 255.5 +5.8% +58.1% +1.7%
アイ・エス・ビー(2025年12月期) 370.2 +9.0% +41.4% -17.6%
クロスキャット(2026年3月期) 173.1 +6.9% +42.8% +7.4%
エクストリーム(2026年3月期) 118.0 +4.1% +63.2% +0.6%
SYSホールディングス(2025年7月期) 140.5 +13.3% +123.0% -2.7%
TWOSTONE&Sons(2025年8月期) 180.8 +26.5% +322.4% +80.0%
ヒューマンクリエイションホールディングス(2025年9月期) 89.5 +24.8% +77.6% +22.2%
テスト・検証
SHIFT(2025年8月期) 1,298.2 +17.3% +182.2% +41.2%
ポールトゥウィンホールディングス(2026年1月期)メディア・コンテンツ事業からの撤退による減収。国内ソリューションは+5.3% 488.4 -6.5% +42.6% 赤字
日本ナレッジ(2026年3月期・単) 44.6 +7.5% +38.1% +8.3%

減収の2社は「AIで仕事が減った」からではない

オープンアップグループの売上は前期比10.9%減ですが、有報には「英国事業の売却に伴う連結除外の影響により、売上収益は…10.9%減となった一方、英国事業を除く継続事業の売上収益は前連結会計年度比4.3%増加」とあります。同社のIT開発領域については「AI関連案件の拡大や契約単価の向上、高稼働率の維持」で増益とも書かれています。

テスト・デバッグ大手のポールトゥウィンホールディングスも6.5%の減収・経常赤字ですが、主因はメディア・コンテンツ事業からの撤退で、国内ソリューション(ゲームのテスト等)は5.3%の増収でした。

大手は「仕事はあるが人が採れない」

技術者派遣最大手級のメイテックグループは、エンジニアの稼働率(全体)が98.5%と高水準を保つ一方、2026年3月末のエンジニア社員数は12,103名で前年から44名減りました。有報は理由を「採用の苦戦」と書いています。上場大手にとっての制約は、案件の不足より採用です。

読み方の注意

上場している会社は、営業力や顧客基盤がある勝ち組側です。業界の大半を占める中小・零細のSES企業の状況は、この表には表れません。そちらは次の倒産統計で見ます。

3. AIの影響が出ているところ

小規模な受託・下請けの倒産が過去10年で最多

東京商工リサーチによると、2026年1〜6月の「情報サービス業」の倒産は166件(前年同期比+18.5%)で、2017年以降の10年間で最多でした。うち135件(81.3%)が従業員5人未満です。同社は背景として、ノーコード・ローコードツールや生成AIの普及で簡単な開発業務の内製化が進み、下請けや小規模案件で業績をつないできた事業者が利益を確保しにくくなっていることを挙げています。

帝国データバンクの集計でも、ソフトウェア業の倒産は2025年4月〜2026年2月で195件と過去10年で最多ペース。うち157件が受託開発で、同社は「多層的な業務委託構造により、下流工程を請け負う中小・零細事業者では価格交渉で不利となる」と指摘しています。

経験の浅い層の入口が狭まっている

厚生労働省の一般職業紹介状況(ハローワーク)で「情報処理・通信技術者」を見ると、2026年8月の数字は次の通りです。

情報処理・通信技術者(常用・パート含む)。出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」参考統計表。ハローワークで受理した求人・求職のみの集計。
項目2026年8月
有効求人倍率1.33倍(前年同月差 -0.09)
新規求人数-3.4%
新規求職申込件数+11.1%
有効求職者数+6.4%

求人が減り、新たに仕事を探す人が1割以上増えています。ハローワークで受理した求人・求職に限った数字ですが、少なくともこの経路では、IT職は「誰でも引く手あまた」の状態ではなくなりつつあります。

企業側の動きもこれと合っています。

  • SHIFT(ソフトウェアテスト大手)は、年収600万円以下のエンジニア345人を含む440人分の採用を止め、新卒にはAIで「10年分のスキルを1年で」身につけさせる方針に切り替えたと報じられました(日経ビジネス、2026年7月8日)。同社の2025年9月〜2026年2月期は売上高17%増の一方、AI人材の採用に伴う人件費増などで営業利益が14%減っています(日本経済新聞、2026年4月14日)。
  • オープンアップグループは有報に「従来の未経験者採用に加え経験者採用を強化したことにより在籍エンジニア数は堅調に推移」と記載。ITインフラ領域では「採用抑制」によるコスト管理も挙げています。

上場各社は有報で「AI」をどう書いているか

有価証券報告書の「経営環境」「事業等のリスク」には、各社が自社の事業へのAIの影響をどう見ているかが書かれています。原文のまま引用します。

  • 「人材不足解消の取り組みとしてDXによる仕事の自動化・無人化が進み、今後一部の設計・開発領域においては、AIが人間に代替される事が見込まれます。」メイテックグループホールディングス(2026年3月期 有報)
  • 「当社グループは、顧客企業の業務プロセスに関して一定のシステム化が生じた場合でも、最終的に「人」によるチェック、テスト、監視又は審査等に係るアウトソーシング業務は必要となるものと考えておりますが、AI等の技術進歩その他により当社グループが提供する業務サービスの一部について需要が減少する可能性は否定できず、その場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。」ポールトゥウィンホールディングス(2026年1月期 有報、事業等のリスク)
  • 「近年における生成AIの急速な進化・普及は、システム開発やテストにおける自動化・効率化(AI駆動開発等)を促進し、開発プロセスそのものに変化をもたらしております。」デジタル・インフォメーション・テクノロジー(2026年6月期 有報、事業等のリスク)
  • 「当期は生成AI等を活用した高度な開発案件や、高単価なDX支援領域へのリソースシフトを重点的に推進しており、この収益構造の転換により、セグメント全体の利益率は向上し、事業ポートフォリオの安定感は一層高まっております。」システナ(2026年3月期 有報)
  • 「費用対効果の高いテストの自動化を行うとともに、これからはAIを取り入れた高度化するシステムの検証技術においても、他社に先んじる必要があります。」日本ナレッジ(2026年3月期 有報)

共通しているのは、定型的な作業はAIに置き換わる前提で、単価の高い上流・AI案件へ人を移すという方針です。現時点で業績が崩れている会社は見当たりませんが、テスト・検証や設計の一部など「AIが代替しうる領域」をはっきりリスクとして書く会社が出てきています。

大手は資本の後ろ盾をつけて構造転換

技術者派遣大手のテクノプロ・ホールディングスは、米投資ファンドのブラックストーンによる総額約5,074億円のTOBを受け入れ、2025年12月9日に上場廃止しました。日本経済新聞によると、ブラックストーンはファンドの資金でAIスキルを持つ技術者の育成やM&Aを進める計画です。

4. 転職市場は二極化:民間は活況、ハローワークは軟化

ハローワークの数字とは対照的に、民間の転職サービスではIT人材の需要はまだ強いままです。dodaの転職求人倍率は2026年8月に2.86倍(前年同月差+0.44ポイント)。2026年6月にはIT・通信業界の求人数が前月比105.4%と全業種で最も伸び、dodaは背景に「企業によるAI活用の拡大や、基幹システム刷新」を挙げています。

2つの統計は対象が違うため、単純には比べられません。ただ、民間の中途採用市場では引き合いが強い一方、ハローワークでは求職者が増えて求人倍率が下がっているという組み合わせは、ここまで見てきた企業の動き(経験者・AI人材の採用強化、未経験・低年収層の採用抑制)と合わせると、経験の有無で明暗が分かれ始めていると読めます。

5. 発注する企業側のAI活用は、まだ「効率化」の段階

IPA(情報処理推進機構)が2026年7月に公表したDX動向調査では、従業員1,001人以上の企業の8割近くがAIを導入済みですが、101人以下の企業では16.6%にとどまります。用途は「文書・音声の要約・翻訳・校正」(82.5%)や「文書・レポートの作成」(80.5%)が中心で、「売上や利益が向上した」という効果は3.9%でした。

つまり、AIはまだ「システム開発をまるごと置き換える」段階にはなく、まず定型的な作業から効率化されているのが現状です。SESの現場で言えば、手順が決まったテスト、運用監視、ドキュメント作成のような工程から影響を受けやすいと考えられます。

6. SESで働くエンジニアが今やっておきたいこと

1自分の担当工程を棚卸しする

テスト実行・運用監視・定型的な保守だけを何年も続けているなら、上の統計で影響が出ている領域にいます。要件定義・設計・顧客折衝・AIツールを使った開発など、一段上の工程に関わる機会を意識的に取りに行きましょう。

2所属会社の「商流」と待機状況を確認する

倒産が増えているのは、下請けの下流工程で価格交渉力のない小規模事業者です。自分の会社が何次請けで案件を受けているか、待機中の社員がどれくらいいるかは、会社の体力を測る目安になります。上場企業なら有報で業績を確認できます。

3経験は「市場価値」に換算できるうちに動く

大手が強化しているのは経験者採用です。民間の転職市場ではIT経験者の求人倍率は高水準なので、2〜3年の実務経験があれば選択肢は多い時期です。年収の相場はSES・技術者派遣の平均年収ランキングで、上場各社の公式データを確認できます。

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よくある質問

SES業界はAIで縮小していますか?

業界全体ではまだ縮小していません。情報サービス業の売上高は52か月連続で前年を上回り、上場SES・技術者派遣20社のうち18社が増収です。ただし伸び率は鈍化し、小規模事業者の倒産は増えています。

AIの影響はどこに出ていますか?

小規模な受託・下請け事業者(情報サービス業の倒産が過去10年で最多)と、経験の浅い層(ハローワークでIT職の求職者が前年比+11.1%、求人倍率が低下)です。

未経験からSESに入るのは今も可能ですか?

可能ですが、入口は狭まっています。大手は未経験者採用を続けつつ経験者採用を強化しています。入社後は定型工程にとどまらず、設計や顧客折衝に関わる経験を早く積むことが重要です。

出典

  1. 総務省統計局「サービス産業動態統計調査」(情報サービス業 売上高、令和8年7月分速報まで)stat.go.jp/data/mbss / 月次整理: 情報サービス産業協会(JISA) 統計データ
  2. 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」2026年10月2日 mhlw.go.jp
  3. 東京商工リサーチ「2026年上半期の『情報サービス業』倒産 166件 過去10年で最多」tsr-net.co.jp
  4. 帝国データバンク「『ソフトウェア業』の倒産動向(2025年度、2月末時点)」2026年3月9日 tdb.co.jp
  5. IPA「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公開」2026年7月16日 ipa.go.jp
  6. doda「転職求人倍率レポート」2026年6月・8月 doda.jp
  7. 日経ビジネス「SHIFT、440人の採用ストップ」2026年7月8日 business.nikkei.com
  8. 日本経済新聞「SHIFTの9〜2月、純利益11%減 AI人材採用で人件費増」2026年4月14日 nikkei.com
  9. 日本経済新聞「技術者派遣のテクノプロHD、米ファンドが5000億円で買収発表」nikkei.com / 日本取引所グループ「上場廃止等の決定:テクノプロ・ホールディングス」jpx.co.jp
  10. 各社 有価証券報告書(EDINET): メイテックグループホールディングス、テクノプロ・ホールディングス、オープンアップグループ、アルプス技研、アルトナー、エスユーエス、アビスト、ジャパニアス、SHIFT、ポールトゥウィンホールディングス、日本ナレッジ、システナ、TDCソフト、デジタル・インフォメーション・テクノロジー、アイ・エス・ビー、クロスキャット、エクストリーム、SYSホールディングス、TWOSTONE&Sons、ヒューマンクリエイションホールディングス
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