60歳以上の退職では、年齢によって受けられる失業保険の種類や条件が大きく異なります。「定年退職は会社都合?自己都合?」「年金と失業保険は同時にもらえるの?」「65歳を過ぎたらどうなる?」——こうした疑問を抱える方は多いはずです。
この記事では、60歳以上の方が受けられる失業保険制度を年齢区分別に整理し、手続き方法・年金との関係・再就職支援制度まで、2026年最新の情報で詳しく解説します。
- 60〜64歳と65歳以上で異なる失業給付の種類と金額
- 定年退職時の離職区分と給付制限の有無
- 年金(特別支給の老齢厚生年金)との同時受給ルール
- 高年齢求職者給付金の申請方法と受給手順
- 60歳以上向けの再就職支援制度・給付金
1. 60歳以上の失業保険:2つの制度を理解する
60歳以上の方が退職した場合、退職時の年齢によって受けられる制度が異なります。
| 項目 | 60〜64歳 (基本手当) |
65歳以上 (高年齢求職者給付金) |
|---|---|---|
| 給付の種類 | 基本手当(一般の失業給付) | 高年齢求職者給付金(一時金) |
| 支給方法 | 28日ごとに分割支給 | 一括支給 |
| 給付日数 | 90〜240日(退職理由・勤続年数による) | 30日分または50日分 |
| 年金との併給 | 特別支給の老齢厚生年金は停止 | 年金と同時受給可能 |
| 受給期間 | 離職日翌日から1年間 | 離職日翌日から1年間 |
| 待期期間 | 7日間 | 7日間 |
60〜64歳:基本手当の概要
60〜64歳で退職した方は、一般の求職者と同じ「基本手当」を受給できます。ただし、60歳以上は基本手当日額の上限が低く設定されている点に注意が必要です。
- 上限額:7,294円(45〜59歳の8,635円より低い)
- 給付率:離職前賃金の45%〜80%(賃金が低いほど給付率が高い)
- 下限額:2,196円
65歳以上:高年齢求職者給付金
65歳以上で退職した方には「高年齢求職者給付金」が一時金として支給されます。基本手当と異なり、一括で受け取れるのが最大の特徴です。
| 被保険者期間 | 給付日数 | 受給額の目安 |
|---|---|---|
| 1年以上 | 50日分 | 約25万〜36万円 |
| 6ヶ月以上1年未満 | 30日分 | 約15万〜22万円 |
法律上、年齢の加算は「誕生日の前日」に行われます。例えば4月1日生まれの方は、3月31日に65歳になります。65歳になる「前日」までに退職すれば60〜64歳の基本手当が適用されるため、退職日の設定は慎重に行いましょう。
2. 定年退職の離職区分と給付制限
定年退職は「正当な理由のある自己都合」
定年退職は一般的な「会社都合」「自己都合」のいずれにも該当せず、就業規則に基づく退職として扱われます。ハローワークでは通常、「正当な理由のある自己都合退職」として処理されます。
- 給付制限なし:2〜3ヶ月の給付制限期間は適用されない
- 給付日数:自己都合退職と同じ日数(90〜150日)
- 待期期間のみ:7日間の待期期間後に受給開始
定年退職後の給付日数
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
定年退職と「離職理由コード」
離職票に記載される離職理由コードは以下のいずれかになります。
- 2D(定年):就業規則に基づく定年退職
- 2E(定年後の再雇用終了):定年後に継続雇用され、その期間満了で退職
- 2C(期間満了):有期契約の期間満了(再雇用契約が有期の場合)
3. 失業保険と年金の同時受給ルール
60歳以上の方にとって最も重要なのが、失業保険と年金の併給調整です。年齢区分によってルールが大きく異なります。
60〜64歳:年金と基本手当の併給調整
60〜64歳の方が基本手当を受給する場合、特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止になります。
- ハローワークに求職申込みをした翌月から年金が停止
- 基本手当の受給が終了した翌月から年金が再開
- 実際に受給していない月も、求職申込中は停止の対象
基本手当の総額と年金の総額を比較し、有利な方を選択しましょう。一般的には、基本手当日額 × 給付日数 > 年金月額 × 受給月数であれば、基本手当を優先した方が有利です。ハローワークの窓口でシミュレーションを依頼することもできます。
65歳以上:年金と高年齢求職者給付金は同時受給OK
65歳以上の方が受ける高年齢求職者給付金は、年金と同時に受給できます。併給調整の対象外のため、年金を受け取りながら一時金も受け取れるのが大きなメリットです。
- 高年齢求職者給付金と老齢年金を同時に受給可能
- 一時金のため、求職活動の報告義務が少ない
- マルチジョブホルダー制度(2022年〜)で複数事業所の合算も可能
4. 定年退職後の受給開始までの手続き
必要書類と手続きの流れ
定年退職後、しばらく休養してから求職活動を始めたい場合は、受給期間の延長申請が可能です。最大1年間の延長ができ、通常の受給期間1年と合わせて最大2年間の猶予を得られます。延長申請は退職日から2ヶ月以内にハローワークで手続きしましょう。
5. 定年後の再雇用と失業保険
継続雇用制度(再雇用)とは
高年齢者雇用安定法により、企業は希望する従業員に対して65歳までの雇用確保措置を取る義務があります。多くの企業では「再雇用制度」として、定年後に有期契約で再雇用しています。
再雇用後に退職した場合
- 再雇用期間も被保険者期間に通算される
- 再雇用契約の期間満了は「会社都合」に近い扱いになることが多い
- 60歳時の定年と再雇用後の退職は、被保険者期間が通算されるため給付日数が増える可能性あり
高年齢雇用継続給付との関係
60歳以降も働き続ける場合、賃金が60歳時点の75%未満に低下した場合に「高年齢雇用継続基本給付金」が支給されます。
- 対象:60〜65歳未満の被保険者
- 条件:60歳時点の賃金に比べ75%未満に低下
- 給付額:低下後の賃金の最大15%(低下率61%以下の場合)
- 注意:基本手当を受給すると、この給付は受けられない
6. 60歳以上の再就職支援制度
高年齢再就職給付金
基本手当の受給中に再就職した60歳以上65歳未満の方で、基本手当の支給残日数が100日以上ある場合に支給されます。
| 支給残日数 | 支給期間 |
|---|---|
| 200日以上 | 再就職日から2年間 |
| 100日以上200日未満 | 再就職日から1年間 |
再就職手当
基本手当の受給資格者が安定した職業に就いた場合、支給残日数に応じて一時金が支給されます。
- 支給残日数が2/3以上:基本手当日額 × 残日数 × 70%
- 支給残日数が1/3以上:基本手当日額 × 残日数 × 60%
再就職手当は「早く就職するほどお得」になる仕組みです。特に給付日数が150日の方が1ヶ月以内に再就職した場合、残日数の70%が一時金として受け取れるため、基本手当をすべて受給するより合計受給額が多くなるケースもあります。
シルバー人材センターの活用
シルバー人材センターでの就業は「雇用」ではなく「請負・委任」のため、失業保険の受給中でも利用可能です(ただし、収入がある場合はハローワークへの申告が必要)。
7. 社会保険の選択肢
健康保険の3つの選択肢
定年退職後の健康保険は、以下の3つから選択します。
| 選択肢 | 保険料の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 任意継続 | 退職時の約2倍(上限あり) | 退職後20日以内に手続き、最長2年 |
| 国民健康保険 | 前年の所得による | 退職後14日以内に市区町村で手続き |
| 家族の扶養 | 0円 | 年収130万未満(60歳以上は180万未満) |
基本手当日額が3,612円以上(60歳以上は5,000円以上)の場合、年収換算で130万円(60歳以上は180万円)を超えるとみなされ、扶養に入れない可能性があります。受給終了後に扶養に切り替える方法も検討しましょう。
8. 60歳以上の失業保険:よくある質問
Q. 定年退職後すぐに働く予定がない場合は?
A. 受給期間の延長申請をしましょう。退職後2ヶ月以内にハローワークで手続きすれば、最大1年間延長でき、合計2年間の猶予を得られます。ただし、延長中は基本手当は支給されません。
Q. 定年後のアルバイト収入は申告が必要?
A. はい、基本手当の受給中はすべての就労・収入をハローワークに申告する必要があります。週20時間以上の就労は「就職」とみなされ、基本手当が停止します。週20時間未満のアルバイトは、収入額に応じて基本手当が減額されることがあります。
Q. 再雇用の給料が大幅に下がった場合の補填はある?
A. 60歳時点の賃金の75%未満に低下した場合、「高年齢雇用継続基本給付金」として低下後賃金の最大15%が支給されます。在職中に受給できるため、失業保険とは異なる制度です。
Q. パートやアルバイトでも失業保険はもらえる?
A. 雇用保険に加入していた期間が6ヶ月以上(65歳以上の場合)または12ヶ月以上(64歳以下の場合)あれば、雇用形態に関わらず受給資格があります。パートでも週20時間以上・31日以上の雇用見込みで雇用保険に加入していれば対象です。